精度管理調査

精度管理調査実施要綱

一般社団法人 日本総合健診医学会 精度管理委員会

2022年10月

はじめに

 日本総合健診医学会では、社会に信頼される理想的な総合健診を実現するために、学会内に精度管理委員会を設けて会員施設に対して学会独自の外部精度管理調査を続けてきた。外部精度管理は参加した個々の施設の信頼性のみならず、参加した会員施設全体の集団としての信頼性を広く社会に示すために重要な役割を担っている。2008年度から、本学会外部精度管理調査の内容を一層充実し、社会の期待に応えるため、これまでの検体検査に加えて、画像診断と生理機能検査を導入し、また、2009年度からはインターネットによるWEB登録と回答の技術を導入して迅速性と信頼性を高めた。
 高齢化社会を迎え、内臓脂肪症候群(メタボリック・シンドローム)に対する健診と栄養・運動指導により病気の進行を抑制でき、「病気はあっても健康」あるいは「病気の予備群ではあっても健康」というような状態にある高齢者の増加を期待する厚生労働省は、2008年4月から「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく健康診査及び特定保健指導を医療保険者が40歳以上の加入者に対し実施するよう定めた。この健診では、内臓脂肪症候群のリスクの重複がある対象者に対して、医師・保健師・管理栄養士・健康運動指導士などが早期に介入し保健指導することで、受診者に自己の体の代謝と病気の関係を理解させ生活習慣の改善を自ら実践させようとするものであり、「総合健診」が企図するものと一致する。
 特定健診の実施機関には以下の規準が設けられている;(1)必要な医師、臨床検査技師、看護師などが確保されていること、(2)救急時における応急処置の設備を有すること、(3)検査室で内部精度管理、外部精度管理が実施されていること、(4)健診結果を本事業で定める電子的標準様式で記録し、医療保険者に対して健診結果を安全かつ速やかに電子記憶媒体で提出できるようにすることとなっている。
 日本総合健診医学会が担保する「優良総合健診施設」とは、身体状況を的確に把握できるように特定健診指定項目および健康評価用項目に関わる検体検査、画像診断検査と生理機能検査の遂行能力が一定レベル以上の施設であることを示すものである。
 本要綱では、日本総合健診医学会が会員施設を対象に実施する外部精度管理調査のための基本指針を定めることとする。


1.検体検査部門

1-1.検体検査調査項目

 項目選択の条件は、原則として、その検査が健康評価に汎用され、臨床的有用性が確立しており、自動計測が可能な項目とする。2023年度の調査項目は健康保険組合連合会との契約項目と特定健診の項目を考慮して、下表の通りとする。参加施設は調査項目の全てについて結果を報告しなければならない。

(注)優良総合健診施設認定基準では、当該検査項目が外注の場合は、「発注施設の責任において当学会の行う精度管理サーベイをうけること」と規定されている。また、同認定基準では、「本学会が行う精度管理サーベイにおいて、全ての項目を網羅し、2回以上連続して「良好」の成績を維持することが実査を受ける必要条件である」と規定されているので注意すること。

2023年度の調査項目

分 類 項 目
栄養評価 総蛋白質(TP)、アルブミン(ALB)、アルブミングロブリン比 (A/G)
肝機能 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST (GOT))、
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT(GPT))、乳酸脱水素酵素(LD(IFCC))
胆道 アルカリ性ホスファターゼ(ALP(IFCC))、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GT)
腎機能 クレアチニン(Cre)、尿酸(UA)、尿素窒素(BUN)、
尿検査(蛋白、糖、潜血)
糖代謝 血糖値 (Glu)、ヘモグロビンA1c (HbA1c)
脂質代謝 総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL-C)、
LDLコレステロール(LDL-C)、中性脂肪(TG)
便 便潜血
炎症 C反応性蛋白(CRP)
血算 白血球数(WBC)、 赤血球数(RBC)、ヘモグロビン量(Hb)、
ヘマトクリット(Ht)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、
平均赤血球血色素濃度(MCHC)、血小板数(PLT)

1-2.検体検査サーベイ用試料

 2023年度の調査項目の仕様は下表の通りであり、それぞれ1~3濃度階調の検体を3回の実施時期に配布する。将来の項目や試料の変更は、委員会が提案し、外部委託業者との協議で定める。

項  目 検体性状 濃度 実施時期
4月 7月 9月
TP 凍結品3mL 3濃度
ALB 凍結品3mL 3濃度
A/G 凍結品3mL 3濃度
AST(GOT) 凍結品3mL 3濃度
ALT(GPT) 凍結品3mL 3濃度
LD 凍結品3mL 3濃度
ALP 凍結品3mL 3濃度
γ-GT 凍結品3mL 3濃度
Cre 凍結品3mL 3濃度
UA 凍結品3mL 3濃度
BUN 凍結品3mL 3濃度
Glu 凍結品3mL 3濃度
TC 凍結品3mL 3濃度
HDL-C 凍結品3mL 3濃度
LDL-C 凍結品3mL 3濃度
TG 凍結品3mL 3濃度
CRP 凍結品3mL 3濃度
HbA1c 凍結乾燥品0.3mL用 1濃度  
血算 加工全血5mL 2濃度  ○
尿検査 擬似尿10mL用 2濃度  
便潜血 擬似便2g用 2濃度    

原材料の調達、品質保存安定性・非感染性保証 ; 製造受託者が実施する。


1-3.検体検査濃度設定条件および配布

 配布試料が2濃度以上の場合、うち1濃度は基準範囲内ないしは基準範囲上限近傍とし、残りは基準範囲を超えるものとする。ただし、基準範囲を大きく超える極端な病的域濃度は避ける。配布試料の性状、濃度、配布法などは、事業年度開始前に、精度管理委員会と外部委託業者との間で協議して決定する。
 外部委託業者は、参加施設に対して指定日時に試料を確実に届け、配布中の試料変性を防ぐ努力(低温輸送など)をする。また、外部委託業者は配布に関わるクレームへの適切な対応をする。クレームがあった場合、外部委託業者はその件数・内容・対処などを精度管理委員会に事後報告する。


1-4.回答方法

 調査の回答方法はインターネットによるWEB登録を原則とする。回答の登録は施設長から指名された回答担当者が行う。WEB登録の詳細は別途各施設に送付する。万一、参加施設の事情によりWEB登録が困難な場合は、事務局と協議して別の方法による回答が可能となるように配慮する。調査の回答法の作成時には、登録のしやすさと、採点・集計作業の迅速化を図れるように配慮する。


1-5.項目別成績評価の方法

 測定値は全施設が一つの値に集約できることが理想である。以前はSDI(standard deviation index)方式で評価していたが、近年、検査の標準化がすすみ変動係数(CV%)が非常に小さくなっているため、合理的なSDI評価が困難である。そこで一部の項目を除き、許容%評価を採用している。なお、評価の目標値を全施設の中央値とする。測定値が正規分布に近似しない項目に関しては、その都度精度管理委員会で評価法を検討する。

定量検査の場合
・目標%による評価法
例)5%評価  

% 評価点 評価ランク
5.00以下 5点 A
5.01~10.00 3点B
10.01以上 1点 B
不参加の場合 0点 D

・SDIによる評価法

SDI範囲 評価点 評価ランク
<1.0 5点 A
1.0-2.0 3点
>2.0 1点 B
不参加の場合 0点 D

(参考) SDI=(報告値―M)÷ SD の絶対値

定性検査の場合*

判定結果 評価点 評価ランク
目標値(最頻値) 5点 A
1管差 3点
2管差 1点 B
3管差以上または不参加の場合 0点 D

*便潜血については、結果が+または-となるため、正解で5点A、他は0点Dとする。


1-6.調査実施毎の総合成績の評価方法

 調査実施毎の総合評価は(1)良好、(2)要調整、(3)不良の3段階とする。

  総合評価 Aランク評価の割合(対総件数)
(1) 良好 60%以上
(2) 要調整 60%未満、30%以上
(3) 不良 30%未満

1-7.調査実施毎の成績報告書

 調査実施毎に発行される成績報告書は、サーベイ実施後約1ヵ月で発送することとし、成績報告書には最低限以下の項目を記すこととする。

  実施日、実施年度、回数
  参加施設名・ID#
  全項目参加した場合の満点数
  参加項目数 (全項目参加義務あり)
  項目毎、濃度毎の成績評価
  当該施設のAランク獲得数と比率(獲得A数/総件数)×100(%)
  双値図・ハコヒゲ図等の資料


1-8.調査実施の成績総合評価書

 検体検査サーベイを実施した施設に対して、年度終了時に成績総合評価書を送付する。
 評価は(1)良好、(2)要調整、(3)不良の3段階とする。
  当該施設のAランク獲得数と比率(獲得A数/総件数)×100(%)
  サーベイ実施毎の総合評価;(1)良好、(2)要調整、(3)不良


2.画像診断・生理機能検査部門

2-1.調査項目

 画像・生理検査部門のサーベイ項目には次のようなものが考えられる:
  基本身体計測(身長、体重、腹囲、BMIなど)
  単純X線(肺・心・腹部・骨関節)、上部消化管X線、下部消化管X線、超音波検査(乳腺、腹部)、食道胃十二指腸内視鏡、大腸内視鏡、注腸造影、膀胱鏡
  視力、聴力、心電図、脈波、呼吸機能
  生活指導(栄養、運動)、個人情報管理、統計値判読法など


2-2.調査項目の選択

 上記のうち胸部単純X線診断と心電図診断を調査項目とする。変更する場合は、前年度に委員会で決定し公告する。参加施設は調査項目の全てについて結果を報告しなければならない。1-1の(注)を参照のこと。


2-3.出題条件

 症例の選択は本サーベイが診断目的でなく、健診としてのスクリーニング能力をチェックするものであることを理解して行う。
  原則として項目毎に複数題を出題する。
  問題には必要最小限の臨床的背景を付記する。
  問題は、患者個人を特定しうるものであってはならない。
  画像などを含む問題の版権は学会に帰属する。


2-4.調査の回答方法と採点基準

 調査の回答方法はインターネットによるWEB登録を原則とする。回答の登録は施設長から指名された回答担当者が行う。WEB登録の詳細は別途各施設に送付する。万一、参加施設の事情によりWEB登録が困難な場合は、事務局と協議して別の方法による回答が可能となるように配慮する。調査の回答法の作成時には、登録のしやすさと、採点・集計作業の迅速化を図れるように配慮する。調査時には調査試料の受取日、判定日または結果報告日、報告者を登録する。

 判定結果の記載方法は原則として以下の5段階の健診指導区分とする。


1. 胸部単純X線診断

正常範囲明らかな異常所見を認めないもの。
軽度異常軽度の異常所見を認めるが、次回健診時に要観察とする。
要経過観察半年以内に胸部単純撮影による再検査が必要。
要精査緊急性はないが胸部単純撮影以外の検査による評価が必要。
通院治療中の場合は、胸部単純所見について受診者が主治医と相談することが必要。
要緊急対応ただちに精査や治療(受診者を診察し専門施設への紹介、または直接専門施設受診を指示)が必要。

将来の診断技術の向上と均質化の参考として所見名または診断名の記入欄も用意するが,総合評価のためには必須ではない。


2. 心電図診断

正常範囲明らかな異常所見を認めないもの。
軽度異常軽度の異常所見を認めるが、次回健診時に要観察とする。
要経過観察半年以内に心電図による再検査が必要。
要精査緊急性はないが、心電図以外の検査による評価が必要 。
通院治療中の場合は、心電図所見について受診者が主治医と相談することが必要。
要緊急対応ただちに精査や治療(受診者を診察し専門施設への紹介、または直接専門施設受診を指示)が必要。

2-5.成績評価の方法

 採点法は出題委員が決定した5段階区分による正解と一致した場合を正答として、得点は正答率を合計点(胸部単純X線診断と心電図診断は各100点満点)に乗じて算定することを原則とする。
 正解とする区分(5段階区分)は問題の性質によりひとつとは限らない。


2-6.総合成績の評価方法

 サーベイ実施毎の総合評価は(1)良好、(2)要調整、(3)不良の3段階とする。

  総合評価 正答率
(1) 良好 60%以上
(2) 要調整 60%未満、30%以上
(3) 不良 30%未満

2-7.成績報告書

 最終集計と成績報告書の作成は、学会事務局で行い、サーベイ実施後、約1ヵ月で発送する。
 成績報告書には最低限以下の項目を記すこととする。

  実施日、実施年度、回数
  参加施設名・ID#
  全項目参加した場合の満点数
  参加項目数 (全項目参加義務あり)
  項目毎の成績評価
  当該施設の獲得点数と比率(獲得点数/満点数)×100(%)
  問題の正答


2-8.成績総合評価書

 参加施設に対して、全項目の成績を合計した成績総合評価書を送付する。
  評価は(1)良好、(2)要調整、(3)不良の3段階とする。
  当該施設の獲得点数と比率(獲得点数/満点数)×100(%)
  総合評価;(1)良好、(2)要調整、(3)不良


3.精度管理事業工程表

実施月 項  目
2月 第1回精度管理調査実施
胸部単純X線診断、心電図診断
4月 第1回精度管理調査 成績報告書の発送
4月 第2回精度管理調査実施
1)3濃度の項目;TP、ALB、A/G、AST(GOT)、ALT(GPT)、LD、ALP、γ-GT、Cre、UA、
        BUN、Glu、TC、HDL-C、LDL-C、TG、CRP
2)1濃度の項目;HbA1c
3)2濃度の項目;尿検査
4)2濃度の項目;血算
6月 第2回精度管理調査 成績報告書の発送
7月 第3回精度管理調査実施
1)3濃度の項目;TP、ALB、A/G、AST(GOT)、ALT(GPT)、LD、ALP、γ-GT、Cre、UA、
        BUN、Glu、TC、HDL-C、LDL-C、TG、CRP
2)2濃度の項目;便潜血
3)2濃度の項目;血算
8月 第3回精度管理調査 成績報告書の発送
9月 第4回精度管理調査実施
1)3濃度の項目;TP、ALB、A/G、AST(GOT)、ALT(GPT)、LD、ALP、γ-GT、Cre、UA、
        BUN、Glu、TC、HDL-C、LDL-C、TG、CRP
2)1濃度の項目;HbA1c
3)2濃度の項目;尿検査
4)2濃度の項目;血算
10月 第4回精度管理調査 成績報告書の発送
翌1月
(以降)
年次総括報告書の作成と配布
年次総括報告書(概要)を学会誌に掲載

4.年次総括報告書

 年次総括報告書は第4回目のサーベイ終了後作成し、参加施設に提供する。また、概要を学会誌に掲載する。年次総括報告書に最低限掲載すべき事項は以下のものとする。

4-1.年次総括

 サーベイ全体の概要説明、参加施設数、施設構成、項目選定の理由、試料の性状、試料配布状況、成績分布などを示す。


4-2.検体検査結果総括

 項目および濃度別の参加施設数、施設構成、採点基準、成績分布、成績評価、コメント、今後改善すべき点など、必要に応じてハコヒゲ図、ヒストグラム、双値図、濃度階調別相関図などを使い出来るだけ分かり易く表現する。


4-3.画像・生理機能検査結果総括

 参加施設数、施設構成、項目選定の理由、採点基準、成績分布、成績評価、今後改善すべき点などを記載し、出来るだけ図表を用い分かり易く表現する。


4-4.次年度の計画

 精度管理委員会は次年度の計画を概ね11月までに決定し、ホームページ等を通じて広報する。


5.その他の事項

試料の準備、採点 検体検査は委員会の指示により外部委託とする。
画像・生理機能検査の出題・採点は委員会が行う。
試料の発送 学会事務局または外部委託業者から施設に発送する。

成績評価

検体検査調査の一次集計と採点は外部委託とするが、すべての最終評価は委員会の責任で行う。
成績の通知 学会事務局または外部委託業者から各施設に発送する。
成績報告書・年次総括報告書
の作成と配布
検体検査調査結果の集計・分析は委員会の指示で外部委託業者が行う。画像・生理機能検査の集計・分析は委員会と学会事務局が行う。年次総括報告書は、外部委託業者が参加者の理解しやすい形で構成し、委員会による評価と合わせて編集し配布する。
費用の請求 学会事務局から各施設に請求書を発送する。
費用の振込口座 学会の精度管理専用口座とする。

6.実施要綱の改定

本要綱の改定が必要となった場合は、委員会が改定案を提示し、委託業者と相談の上で決定し、理事会の承認を得るものとする。


7.施 行

2007年12月1日
2009年04月7日改定
2009年11月1日改定
2010年10月1日改定
2011年10月1日改定
2012年10月1日改定
2013年10月1日改定
2014年10月1日改定
2015年10月1日改定
2016年10月1日改定
2016年10月13日改定
2017年10月1日改定
2018年10月1日改定
2019年10月1日改定
2020年10月1日改定
2021年10月1日改定
2022年10月1日改定

※実施要項ダウンロードはこちら
>>2023年度 日本総合健診医学会 臨床検査精度管理調査 実施要項(PDF)